においの記憶
人間の五感のなかで、最後まで残るのは嗅覚だと、昔誰かに教えてもらった気がします。
街の中、ふと嗅いだにおいから、記憶が蘇ることがあることを思えば、なるほど、そうかも、と思います。
ずっと前に終わった恋の残り香も、記憶の隅に残っています。名前も思い出さなくなったカレの部屋のにおい、寄り添ったシャツの淡いコロンの香り、クルマに残っている煙草のにおい…ふだんは忘れているけれど、急に思い出して胸が締め付けられます。
飲み会の席で、ジンジャーエールのグラスの氷をカリカリと噛みながら、ふとほのかなアルコールのにおいを感じて、胸がきゅって鳴りました。ざわざわした場所から一瞬切り離されて・・・あのときの不安定なあたしが、夏の夜の雨上がりのにおいとほのかなアルコールのにおいをカラダで感じながら、背の高い横顔を見上げている・・・あんなにいろんなにおいが渦巻いている場所にいても、記憶の中の香りだけを、ハッキリ分けることができるのですね。
そのうちすべてのことが記憶の片隅に追いやられて、ふだんは忘れてしまうのでしょう。秋が過ぎて、冬が過ぎて、もしかしたら彼のこともそんなに好きじゃあないなんて思い始めて、それでもあの日のにおいを感じてしまったら、胸がきゅって鳴るのでしょう。
いつか齢を重ねて、おばあちゃんになっても、覚えているのでしょうか。
夏の夜の雨上がりのたびに、懐かしい痛みを。
それは素敵なことなのでしょうか?
今はまだ、わからないけど。
忘れたくないなぁ。
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