眠れる森の妄想乙女。
昔、あるところでひとりの乙女が産まれました。案の定、ぺぺです。
その乙女はぺぺと名付けられました。そして、生誕祭が開かれました。この祝宴に、賢女たちが招かれました。王国に賢女は13人いました。しかし賢女の食事用の皿は12枚しなかったので、ひとりは招かれず家にいなければなりませんでした。
祝宴は盛大のかぎりをつくしておこなわれました。祝宴の終わり近くになると、賢女たちはぺぺに、それぞれぺぺに見合った素質をさずけました。一番目の女からは妄想が、二番目からはスイーツが、三番目からはお笑いのセンスが、以下同様に様々な素質がさずけられました。十一番目の女が予言を終えたちょうどそのとき、突然十三番目の女が祝宴の場に入ってきました。彼女は招かれなかった復讐をしたかったのです。誰にも挨拶せず、誰も見ることすらせず、女は大きな声で言いました。
「ぺぺは十五才で糸繰車のつむ(糸巻き)の針に刺され、倒れて死ぬであろう!」
女はこれだけ言って、きびすを返して広間を去りました。みんな愕然としていました。そのとき、まだ予言を終えてない十二番目の女が歩み出ました。彼女は先の邪悪な呪いを消すことはできませんでしたが、弱めることはできたので、こう言いました。
「ぺぺは亡くなられるのではなく、百年の深い眠りに落ちるのです」
ぺぺを不幸から守ってやりたいと思った王様は、国中の全ての糸繰車を焼却すべしとの命令を出しました。
さて、ぺぺにさずけられた賢女たちの言葉はすべて実現しました。ぺぺは、妄想がちで、スイーツ大好きで、お笑いのセンスがあるかどうかはビミョーなブログを書いていて、この子を見ると誰でも残念に思わないではいられませんでした。
ぺぺがちょうど十五才になった日のこと。ぺぺはひとりぼっちで城に取り残されていました。そこでぺぺは、城内あらゆるところを歩き回り、気のおもむくままに部屋から部屋を訪れ、とうとう古い塔のあるところにやって来ました。ぺぺは狭いらせん階段を上って、小さな扉の前にたどりつきました。扉の錠にはさびた鍵がささっていました。それを回すと、扉がはねるように開きました。そこは小さな部屋で、糸巻き棒を持ったひとりの老婆が、せっせと亜麻を紡いでいました。
「こんにちは、おばあさん。そこで何してるの」とぺぺは言いました。
「糸紡ぎじゃよ」
「ぴょんぴょん動いてる、その面白そうなものはなあに」
そうぺぺは言って、糸巻き棒を手にして自分も糸紡ぎをしようとしました。しかし糸巻きに触れたとたん、呪いが実現して、針で指を刺してしまいました。ぺぺは刺されたと感じた瞬間に、そこにあった寝台の上に倒れて、深い眠りにおちいりました。城の周囲ではいばらが伸びてしげみになりはじめました。いばらのしげみは年ごとに高くなり、ついには城全体をおおい隠して成長を続けたので、城はまったく見えなくなり、屋根の上の旗でさえ見えなくなりました。
こうして、眠れるぺぺの伝説がゆきわたりました。ぺぺは妄想乙女と呼ばれ、噂が広まるにつけ「どうやら美女らしい」と尾ひれがつくようになったので、ときどきよその国の若者たちがやってきては、いばらのしげみを突破して城へたどり着こうとしました。しかし彼らは失敗しました。
長い長い年月のあと、とてつもなく素敵な若者がやってきました。その名も麗しい「王子様」! 王子様は、老人がいばらのしげみの話をするのを聞きました。老人の話によると、いばらのしげみの向こうには城が建っていて、城の中に「妄想乙女」というたいへん美しい乙女が、もう百年も眠っているということでした。すでに他の多くの若者たちがやってきて、いばらのしげみを通りぬけようとしたものの、みんな失敗したことも聞きました。
「だけど、ぜひとも貴殿には行ってほしいのじゃ」
嫌な予感がした王子様は、老人に何度も断りました。が、老人はどうしても、どうしてもとせがみます。最終的に、コントのセリフだと思っていえばいいからと頭を下げられ、やむなく王子様は言いました。
「ぼくは怖くない。美しい妄想乙女に会いに行くのだ…マジかよ…」
その時、ちょうど百年の月日が流れ、ぺぺが眼をさますべき日がやってきていました。
王子様が近よると、そこにはなぜかお菓子の道があって、まったく王子様を傷つけずに通してくれました。
「全然いばらじゃねーし」
王子様が歩を進めると、あたりは静まりかえって、息をする音が聞こえるほどになりました。
ついに王子様は塔に着きました。扉をあけて小さな部屋に入ると、そこにはぺぺが眠っていました。ぺぺの寝相はたいへん悪く、あまつさえいびきまでかいていたので、王子様の目は点になりました。
「なんだよ、あのじじぃ、少しも美女じゃねーよ」
王子様がつぶやくと、なんと。ぺぺの目がぱちりと開きました。
「うゎっ、ホラーか!?」
「違いますぅ。100年間、王子様を待っていたのです、アイラビュー♡」
ぺぺに夢見る眼差しで見つめられた王子様は、身の危険を感じ、脱兎のごとく塔から駆け下り、城を出ると、その入り口を固くいばらで縛りました。
『開けるな危険』の貼り紙を貼ると、王子様は満足げにうなずき、怪しい城を後にしました。
「さーて、ゲーセンでも行くかー」
王子様に逃げられたぺぺは、やむを得ず、二度寝を決め込んだのデシタ。おしまい。
*****
最近の眠さハンパなく、午後イチのPC作業のとき、メモした文字が完全に寝てたり、夜も何かしてる途中の寝オチだったり、朝は朝で何度寝かわかんないほどとろとろ眠って起きれないのです。
そんな状態なので、こんな話を書いてしまいましたとさ。あはー☆
おやすみなさい。よい夢を。
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