おなかがすいて死にそうなの 早くあなたに会いたい
※お久しぶり。ぺぺの妄想劇場です☆
夜の7時。
打ち合わせが長引きそうだ、って電話があったから、少し待つことはわかっていた。
だけど、歩き疲れたミュールの足が痛い。
金曜日の街はきらめいて。
肩を寄せ合い、笑いさざめく恋人たち。
あたしはうつむいて、スカートのすそを気にしてる。
少し、しわに、なっちゃった…。
君に逢うのはなんだか久しぶりだから、少しでも綺麗にみせたかった。だから、朝から何着も服を着ては脱ぎ、着ては脱ぎ。気がついたら、会社に行くいつもの時間より5分も過ぎていた。慌てて、走ったから、汗だく。最悪。おまけにメイクもちゃんとしていない。最悪。
あんまり走って、ミュールが脱げて、転びそうになっちゃった…ホント、最悪。
スカートのすそを引っ張って伸ばしながら、あたしは最悪な朝のことをぼんやりと思い出してた。
夜の7時。
君はまだ来ない。
打ち合わせはどれくらい、長引くのだろう。
早く、逢いたいのに。
それとも、早く逢いたいのは、あたしだけなの?
雨がぽつんと降り始める。
ぽつん、ぽつん…
手を繋いで駆け出す恋人たち。
あたしはひとり、まだスカートのすそを気にしてる。
このくらいの雨なら大丈夫。
だけど。
夜の7時。
止まっている、腕時計。
全然気づかなかった。
どうりでおなかがすいている。
もうそろそろ来るころかな。
雨上がりでキラキラと輝く金曜日の街。
スカートのしわも、もう大丈夫。
きっとそろそろ君は来る。
心臓が駆け上がる。どきどきが身体中に広がって、体温が上がる。あたしを取り巻いている香りが、強くなる。
君も気づいてくれるかな。
夜の7時。
少しずつ、足音が近づいてくる。
あたしはうつむいて、とびきりの笑顔を、そっと準備する。
ピチカートファイヴ「東京は夜の7時」
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