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    ☆ぺぺ☆ 妄想星の妄想姫。 万年ダイエッター。 王子様に圧倒的片想い中。 精神状態は中学生レベル。 肉体的には…え~っと…めざせキューティハニー!

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おはなし☆短い話

2009年7月27日 (月)

ぼくのなつやすみ

※本日は創作物です

午前4時。ぱっちり目覚める。心がざわざわする。じっとしてられない。

頭に鳴り響くのは、あれはなんて言ったっけ、昨日観たDVDでかかっていた曲。

ジョゼと虎と魚たち―――のあのうた。僕が旅に出る理由は、って。

あのうた。

心がざわざわする。

―――そうだ。旅に出よう。



そうと決めたから、頭をしゃっきりさせるのに、バスタブに湯をためた。

いつもなら、まだ夢の中。

今日は何故だか、風呂の中。

僕は頭のてっぺんまでぶくぶくと潜った。

旅に出るって、どこに行く? そうだな、ニューヨークまでひとっ飛び。

―――なんて、できるわけがない。日帰りだよ、日帰り。

日帰りできて、適度に遠くて、のんびりできるところ。

ぶくぶくぶく……ぷはっ。

のぼせてきた。

とりあえず、シャンプーでもしよう。



いつものトーストとコーヒーの朝食さえ、何だか違って見える。

今日は僕の夏休み。

かばんに音だけ詰め込んで。

カイシャには、とびきり具合悪い声で電話した。

心配してくれたカイシャの皆さん、ゴメンナサイ。僕はこれから旅に出ます。

病院にいることになってる僕が、今立っているのは、長距離バスのステーション。

往復の乗車券と、ジンジャーエールのボトルを握り締めて、出かける先は、あのドラマで有名な、あの場所へ。



っていっても、目的なんかあったわけじゃないんだ。

ぶつぶつとつぶやきながら歩く僕の肩に、リュックの紐が重く食い込んでくる。

何にもない贅沢。

だけど、ホントになーんもないんだ。見渡す限りの畑。時々の民家。ホントにこっちでいいのか? 看板見て進んだはずだけど。てゆーか、5kmって実は遠いのか? 駅前のレンタサイクルの店の前で、1時間200円ぽっちにひるんだ自分が恨めしい。道もわからず、7月のお日様に照らされて、汗を拭き拭き歩く道。

道端には花。ここはラベンダーしか咲いてないのかと思ったら、そうでもないのな。どれがラベンダーなのかは知らないけど、アレはどう見てもひまわりだ。それにコレはどう見てもただの雑草だ。たぶんラベンダーなんか1本もない。

イメージって怖いな。

まぁいいけど。花を見に来たわけでもないし。

てんとう虫が飛んできて、僕の左胸に止まる。

自然のブローチ、か。いらねぇよ。ふっと息を吹きかけて飛ばす。

青々とした畑を渡ってくる風は、その、なんていうか、肥料のかおりが―――つまりハイセツブツのにおいが―――していて。

僕はなんでこんな道を歩いているんだろう?

たったひとり、地図も持たないで。

iPodの充電が切れてしまう。

ちぇっ……ヘッドホンをはずして、首にかける。

鳥の声、虫の声、草葉の擦れ合う音。自然の奏でるオーケストラ。

ふっと力が抜ける。

見上げた夏の空、うろこ雲。

視線を落とすと、小さなバッタ。

右を向けば、もつれ合って飛んでくちょうちょ。

左下には、四つ葉のクローバー。

って。珍しいよな? 幸運を呼ぶんだよな? 手折って、財布に挟み込む。

行こうと思ってる公園まで、あと2km。

もう3kmも歩いてきたのか。

こんなふうに歩くのも、久しぶりだ。

てゆーか、腹減った……

こんな何もないところに、飯食う場所なんてあるのか? コンビニさえないのに。



だけどあった。

だだっぴろい公園の隣、ちょっとイカしたカフェ風の造りの店。

感謝、感謝。フライドポテトが熱すぎて口の中火傷しちまったけど、感謝。

大きく口を開けて、分厚いハンバーガーに齧り付く。

刻んだピクルスがぽろぽろこぼれ落ちる。マスタードが口の横にはみ出して、くっつく。

君がいたら、笑うんだろうな……

僕より大きな口を開けて齧り付いて笑いかける、君の姿が目の前に浮かんで、消えた。

君はいない。



いつからだろう。君は笑わなくなっていたよね。

一緒にいることに慣れすぎて、大切なのに、大切にしなくなっていた。いつだって君は僕を許してくれていたから。

君の笑顔、好きだったのに。

最後の泣き顔だけが頭に焼き付いている。



駅まで戻る道は、行く道よりも短く感じる。だけど、確実に、足にダメージが来てる。

そのせいか、行く道よりもいろいろなことを考えてしまう。

いろいろ……幼いころ、眠るときに母が聞かせてくれていた「ねむねむさん」の話とか、小学生のときに作った「秘密基地」のこととか、プールの帰りに食べたオレンジシャーベットで腹を下したこととか、くだらないことばかり。

だけど、こんなことずっと忘れていた。

忙しいって、毎日眉間に皺を寄せて、過ごしていた。

僕も笑わなくなっていた。

こどものころ、毎日笑っていた。

君といた僕、毎日笑っていた。

どうしてこんなカンタンなことを忘れていたんだろう。できなくなっていたんだろう。

空を見上げる。

ああ、雨が降りそうだ。



駅に着くころには、ぽつり、ぽつり、雨が降っていた。雨を避けて入ったカフェで、ぼんやりと、温かいコーヒーを口に運ぶ。

贅沢な時間の使い方。

いつもなら資料をまとめているころか、急な打ち合わせに奔走しているころか。

全部忘れて、のんびり。

土産でも買っていこうか? いや、具合が悪いことになっているんだった。日に焼けてたらまずいかな。まあ、いいや。そんなこともあるだろう。

帰りのバスまで、あと30分。

君の気持ちはわからない。

連絡が途切れて、どれくらい経つのだろう。

ホントにもう逢えないのかな? あのマンション、あのドアの前、今も小さな君が震えて泣いているような気がする。

心がざわざわする。

君は今、どこで何をしている?



帰りのバスは、行きよりもスカスカだった。

うとうとと眠ったら、君の夢を見た。

今日けっきょく見ることのなかったラベンダー畑の真ん中で、君は昔のように笑っていた。

起きた後、君にメールを送ろうと思った、けど、送らなかった。

君には直接、逢いに行こう。

財布に挟んだ四つ葉のクローバー、君にお土産だよって渡したら、君は笑ってくれるかな?

僕たちの住む街まで、あと30分。

僕は君の笑顔のことだけを考えて、バスに揺られている。



Fin

2007年6月 4日 (月)

6月のクラフティ

6月のクラフティはアメリカンチェリーのクラフティです



行きつけのカフェの壁に、かわいらしいイラスト入りのポップな文字が並んでた。

このカフェは、季節によって、毎月違うクラフティを出してくれる。

いちごだったり、桃だったり、甘夏だったり、ブルーベリーだったり。

だけど、このアメリカンチェリーのクラフティが、あたしはいちばん好き、だった。

黄色い生地に、ぽつぽつと真っ赤なドット模様。

確か、去年のこの時期もアメリカンチェリーのクラフティで、あたしはこれがとても好きになったと、やっとの思いで話した。

向かいの席に座っていた彼に。



緊張していた。

ただ憧れていたひとが、カレシになって、初めて目の前に座っている、という状況に。

彼は、あたしの緊張をほぐすかのように、笑いながら言った。

「女の子の好きそうな店なんて知らないから姉ちゃんに聞いたんだけど。なんかかわいすぎて、緊張する」

意外と長いまつげ。笑うと目の下にできるやさしい窪み。

ひとつひとつ気付いていく事柄に胸がきゅうっと締め付けられて、あたしは彼をただ見つめていることさえできずに、うつむいた。

「ここは、クラフティがおいしいらしいよ」

「クラフティ……ですか?」

「うん。どんなのかは、俺も知らないんだけど。今はね、さくらんぼのクラフティなんだって。あ、俺、姉ちゃんの言ってたこと、そのまんま話してる」

肩をすくめた彼を見たら、あたしの口からくすくす笑いがこぼれてきた。

ようやく笑ったあたしを見て、彼も笑った。

「それに」

不意に、彼の目が真剣なものに変わる。

「水玉模様、好きでしょ?」

「え? ハイ、でも、どうして……」

「そのバッグ」

あたしはいつも、赤いドット模様のバッグをお弁当入れに使っていた。

そんなことを知っていてくれたの?

「さくらんぼのクラフティも、水玉模様、なんだって。だから、似合うかなぁ、なんて思った。きっと気に入ってくれるんじゃないかなぁ、なんて」

早口で、一気に喋って、ふぅと息をついた。

耳元が赤く染まっている。

それをぼんやり見ていたら、彼は目の前にあったお水を、一気にごくごくと飲んだ。

ただ、憧れていたひと。遠いひとだと思っていた。

たまたま偶然に同じ電車に乗ったときにぶつかって、ただ謝るつもりが勢いあまって告ってしまって、あっさりOKされて、本当にどうしようなんて思っていた。

だけど。

彼もふつうのひとなんだなって。照れくさそうに目をそらす彼を見て、思った。

あたしのこと、見ていてくれたんだ……。

運ばれてきたアメリカンチェリーの水玉模様は、あたしのバッグによく似ていた。



ふとしたきっかけで転がり込んできた恋は、いつのまにか消えてなくなった。

お互いに、まだ慣れていなくって、疲れてしまったのかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。

嫌いになったわけでもなくて、自然にいつの間にか逢わなくなった。

だけどあたしは、今も、彼が教えてくれたこのカフェに、よく来ている。

そのたびに、照れくさそうに笑う彼を、長いまつげを、目の下にできるやさしい窪みを思い出して、胸がきゅっとなる。

運ばれてきたアメリカンチェリーのクラフティは、今はもう使っていないあのバッグと同じ水玉模様で、気がつくとお店のギンガムチェックのテーブルクロスにもぽつりぽつりと水玉模様が落ちていた。





☆ ☆ ☆

唐突におはなしでした。

もひとつのブログのほうに書いたタイトルで、イメージがむくむくできたので、書いてみちゃいました。

推敲ナシの一発書きです。

気が向いたらそのうち直すかも…といいかげんに考えている、書き逃げぺぺでした(^^;)

2007年3月21日 (水)

あおのあお

何年前のうたなのかな、生まれるよりもきっとずっと前のヒット曲なんだけど、よーく知っている。

ときどき、なんとなくうたっている。

うえをむいてあるこうなみだがこぼれないように

だけどさー。上を向いても、涙ってこぼれ落ちてくるんですけど。

ぼたぼたぼたぼたと。鼻水だって垂れてくる。

太陽がまぶしくって、ますます泣けてくらー。

この空の青に、吸い込まれてしまいそうだ。

空は広いな大きいな……これは海だったっけ。

なんにしても。この空と比べて、なんて自分はちっぽけなんだろう。

ちっぽけなあたしの、ちっぽけな悩みなんか、ちゃんちゃらおかしいや。

ちゃんちゃらおかしいやって。笑いながら、また泣いた。

空はどこまでも青くて、透き通っていた。



「好きな子ができたんだ」

耳の奥でリフレインすることば。

意味がわからないのに、くるくると回る。

いや、意味はわかっている。心が理解しようとしないだけで。

「だからもう会えない」

セカンドでもいい、セフレでもいい。

なんでもいいから側にいさせて。

そんなことばのかたまりをムリヤリ飲み込んで、笑った。

いいよいいよ、オマエなんかよりイイ男は5万といるさ。

そんなあたしに、ほっとした笑顔を向ける男。コイツ、バカダ。

いい男が5万いても、好きになれる男なんか、そんなにいるわけないだろ、ばか。

ソンナバカヲ、マダ好キナ自分ガ、イチバンバカダ。

だって、知ってた。ほかの女の子――しかもめちゃくちゃかわいい子――と一緒にいたのを、見たことがある。黙っていたけど。ともだちにも言われた。なんか、ヤバくない?って。

だけど、信じたかった。

気付かないふりをし続けた。

のんきに笑っていれば、きっといつか戻ってくるんじゃないかなんて、甘い夢をみていた。

軽いシカトも気付かない振りして、今日なんかのこのこと家まで押しかけて。

見て、この手土産。タッパーに詰めた肉じゃがなんて。泣けるでしょ、この押し付けがましさ。でも、好きだったじゃん? あたしのつくった肉じゃが。

そしたら、ため息交じりの最後通告。

好きな子ができたって。もう会えないって。

今にも震えだしそうだったから、頬の内側を強く噛んだ。切れた。

生ぬるい血の味が広がって、吐きそうになる。

吐きそうだ、吐きそうだ、吐きそうだ。

だけど、目の前でへらっと笑うこのばかの前で弱いところは見せられない。

背筋を伸ばして、立ち上がって、じゃあねと言って部屋を出る。

見慣れた部屋。匂い。

ちょっと前まであたしの一部だった何かが剥がれていく。

くらくらする。ああ、地球は、回っているんだ。いや、これは、めまいだ。

だけど、2本の足で、毅然と立つ。

そんなあたしの背中に、男は冷たいつららを突き刺した。

「ゴメン」

ゴメンで済むならケーサツいらねーっつーの。

倒れそうになった。倒れないけど。

ドアを閉めて、もしも追いかけてきたらなんてありえないこと考えたら少し早足になって、だけど追いかけてくることなんてないから別に泣こうがわめこうが関係ないんだって思って、でも泣き顔が不細工だと言われたことがあったことを思い出したから慌てて走った。

めちゃくちゃカワイイ新カノに偶然ばったり会ってしまったらどうしようかと思いながら、めちゃくちゃ走った。

「ここに来る途中に、鼻の穴広げて泣いてる女の子を見たよ」

なんて言われちゃった日には。

男に、絶対あたしだって気付かれるから、やだ。

去っていくあたしのほうが、カワイイ新カノより果てしなく不細工なんて、かっこ悪すぎる。

泣くもんか。見られるもんか。

上を向いて歩こう。涙がこぼれても歩こう。

見上げた空がめちゃくちゃ青かった。

青くて青くて青かった。

太陽が目にしみる。

上を向いたまま歩いていたら、つまずいて転んだ。

遠くで小学生が「水玉ぱんつー」とはやし立てているのが聞こえる。

近くにいたサラリーマンが、笑いを含んだ声で「大丈夫ですか」と声をかけてきて、あたしの泣き顔をみてぎょっとしていた。

驚くほど不細工でしたか。そうでしたか。

だけどサラリーマンさんは親切で、あたしのスカートの乱れを直してくれて、ハンカチを貸してくれた。

「何があったか知らないけど、元気出して」

励まして去っていくサラリーマンさん。

やさしいなぁ。

やさしさが滲みるなぁ。

他人とは、かくもやさしきものなり。つらいこと多いんだろうね、サラリーマン。だからひとにやさしくなれるんだね、サラリーマン。

ハンカチ、もらっちゃっていいんスか。鼻かんじゃいますよ。びぃ~む。

どうにも膝が痛いと思ったら、すりむいて血が滲んでいた。

このハートもすりむけて血が滲んでいるのだろうか。それともぽっきり折れているのだろうか。この痛さは、一体、何なんだ。

傷口を、ハンカチで押さえようとして、やめた。汚れてしまう、傷口が。

それに、血の染みは洗っても落ちない。せっかくの青が汚くなる。

めちゃくちゃに青い空と同じだけ青いハンカチ。サラリーマンさんの汗とか涙とか吸い込んだかもしれないハンカチ。

幸福は黄色いハンカチで、涙を拭くのは木綿のハンカチーフで。

どっちも古い話だなー。いつの時代の人間だ。

そもそも。

こんなちっぽけなことで、こんなにぐしゃぐしゃに泣きながら歩くなんて、時代錯誤も甚だしい。

だけど、おかしい。止まらない。

おかしすぎて、ちょっと笑う。

ははははは。

……涙だらだら、鼻水だらだら、膝から血を流した土埃まみれの女が笑っている。

相当シュールな絵だぞ。

大笑いだ。

笑うほどに涙が止まらない。

おかしくって笑ってるんだよー。笑いすぎて泣いてるんだよー。

心の中でどんなにアピっても、誰にも通じない。

こんなにぐちゃぐちゃじゃあ、電車にだって乗れやしない。

仕方なく、公園に立ち寄る。

ちっぽけな児童公園。うさぎやぞうの遊具むなしく、ひとっこひとりいない公園で、さるのブランコにひとり腰掛け、少し揺らす。

ブランコ、何年ぶりだろう。

こどものころ、よく乗ったなぁ。空に飛んでいけるんじゃないかと思って。

ぐいぐい、こいでみる。

どこまでこげるかな。地面と水平になるくらい。いや、空に手が届くまで。

行け行けどんどん……うえっ、キモチワルイ。酔ってきた。

こどものころは、全然平気だったはずなのに。

慌ててブランコを止めて、手にしていたハンカチで口元を押さえる。

あ、コレ、鼻かんだハンカチだった……。



太陽はまぶしくて、空は青くて、悲しいくらいいい天気のうららかな春の日。

失恋をしたあたしは、親切なサラリーマンさんの血と汗と涙、そして自分の鼻水を吸い込んだハンカチを片手に、上を向いて歩いていた。

こんなあたしを、人はどんなふうに思っているのだろう。

どうでもいいや。笑いたければ笑えばいいさ。

今日はこんなあたしでも仕方ない。

だけど明日からは、絶対キレイになってやる。

ふったことを悔やむくらいキレイになってやるから。

青い空に誓う。

青い青い青い空に、誓った。



。。。。。。。。。



実話が元になっているわけではありませんが、はじめて失恋した日、確かに泣き笑いをしたのを覚えています。

アレも春だったっけ? チャリ、乗ってたなー。

「あおのあお」、そんなことばを思いついたばっかりに、こんなおはなしを書き上げてしまいました。ふはは。

ちなみに、今まで書いたおはなしの、どの登場人物より、ぺぺに近いです。この壮絶なまでのノリツッコミ感と、自虐感が(^^;)

失恋してもなお、思い出に溺れることなく突き進んでゆく。ぺぺの基本姿勢です。

でも、王子様には失恋したくない~ん てへ

2007年3月12日 (月)

かなしいきもち

たとえば、恋をするということは

恋をするその日までは、薔薇色のフレームに縁取られた

光が溢れる輝かしい素敵なことだと思っていますが、

いざ恋におちてしまえば

目が覚めるほど美しいことばかりでなく、

うす汚くどろどろとしたヘドロ状のものがこの体を満たしていたり

台風の夜のように荒々しい風に吹かれていたり

その風に怯えて眠る小鳥のように弱くなったり、

それでも…



「…ってぇ~」

いきなり、通りすがりのヤツに後ろ頭をぱこんとひっぱたかれる。

振り向かなくてもわかる。こんなことするヤツはひとりしかいない。

アタシは、書いてたノートを慌てて閉じて、振り返って、露骨にイヤな顔をしてやる。

ヤツは席にどかっと座ると、ニヤリと笑って、手を出してくる。

「何?」

  「見せて」

「ヤダ」

  「なんで」

「アンタにはワカンナイから」

そう、アンタにはワカンナイ。

恋を夢見ていたあたしがうっかり踏んづけてしまった恋のカケラは、こんなにも、あまりにも身近だった。

白馬に乗ってくるはずの王子様は、毎朝自転車に乗ってやって来て、オマエは漫才のツッコミかというくらいのイキオイであたしの後ろ頭をぱこんと叩いて、笑いながら追い抜かしていく。

座席もあたしの斜め後ろで、通り過ぎるときいつもぱこんとやられる。

だけど、それは、あたしにだけ。

それを知ってるから、怒るより先に、頬が緩む。慌てて頬を引き締めて、怒る。

こんなはずじゃあなかった。

夢に見ていた王子様は、もっと上品で、やさしくて、涼しげな眼差しで微笑んで、あたしのことをまるで壊れやすい繊細なバカラグラスでも扱うように丁寧に扱ってくれる。

平気で下ネタを言って、ゲラゲラ大口を開けて笑うようなヤツは、お呼びでない、はずだった。

そもそも。

夢に見た王子様は、あたしだけを大切にしてくれていた。

目の前で笑っているコイツは、カノジョのカレ、だ。



恋をしては、いけないひとだった。

だけど、気付いたら、走り出していた。

海図も、方位磁石さえ持たず、嵐の大海原に飛び出してたみたいなモノだった。

しかも、舵の取り方さえ知らない、ど素人が。

あたしは、泣きたいのか、笑いたいのか、怒りたいのか、わめきたいのか。

それさえわからないまま、ヤツに向き合う。

キモチは揺れる。吐き気すら覚えるほどに、揺れる。

下ネタでも冗談でもない、真面目な顔で切り出すときの話は「最近、アイツが…」。

あたしはしたり顔で頷きながら、密かに思う、「のろけてんじゃねぇよ」。



たとえば。

ヤツがカノジョを捨てて、あたしの眠る窓辺にやってきて、恋のうたを囁いて。

その2本の腕であたしのことを抱擁し、やさしい瞳であたしを見つめ…

…いや、ナイナイ。

キモチワルイ。

キモチワルイといいながら、そんな想像を止めることができないのは。

キモチワルサの向こう側に見え隠れするキラキラした世界に、この身を委ねてみたいと思ってしまうから。

息が止まるような幸せとか。

あたしだって知りたいんだ。

さらにその向こう側に見え隠れする汚いものには目をつぶって。



ある意味、カノジョよりずっと近いのに。

こんな役、捨ててしまいたい。

だけど、この役にすがりついてしまう。

たったひとつの、儚い、蜘蛛の糸のような…

トモダチ。

便利な言葉だ。

そして、残酷な言葉だ。



恋しいという文字と

悲しいという文字が

重なって、涙で揺れる



ノートに書いて、そっと閉じる。

こんなキモチは、リボンで縛って、焼却炉に投げ入れてしまおう。

今日もヤツはあたしの後ろ頭をぱこんと叩いて、笑いながら去って行く。

「何するんだよ」

  「ぼーっとしてるからだよ」

あたしのキモチなんてワカンナイまんま、ずっと笑っていればいい。

あたしも。

ほら、ね、こうやって笑っているから。

アンタの前じゃ、絶対、泣いたりしないから。



「悲しい」と「恋しい」は、少し、似ている。

2006年12月13日 (水)

気の早いクリスマスプレゼント

もうすぐクリスマスですね。ぺぺです。

これが600投稿めなのです。ははは。書きすぎです。でも、いつもきてくれている皆様に、なにかお返しを…と思っているうちに書いてしまいました。

モチーフは、以前書きました「3分間だけ恋人になってください」です。

3分は短すぎるので、ぺぺが王子様と過ごした時間、30分にしてみました(^^;)

クリスマス前の、ちょうど今時期の、ハートウォーミング?なおはなしです。

よろしければ、お楽しみください。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

「プレゼント」

目の前に急に現れた初対面の女の子が、緊張した面持ちで「30分だけ、恋人になってください」なんて言い出したら、いったいなんて答えればいいのだろうか。

もちろん、「忙しいから」と言って、断ることもできるだろう。

だいたい、急にそんなことを言い出すなんて、何者なんだ? 逆ナン? 何か事件に巻き込まれる? もしかしたらちょっとキちゃってる子、なのかもしれない。係わり合いにならないほうが無難だろう。

だけど、彼女のせっぱつまった形相に、僕は思わず頷いてしまった。

頷いてしまった後にものすごく後悔したのだけど、彼女はぱぁっと表情をほころばせていった。

「ありがとうございます」

ぺこり、と頭を下げる。

ちょっと、かわいい子、かもしれない。白いコートに白いマフラーを巻いた、おかっぱ頭の女の子。僕もつられて、ぺこりと頭を下げる。彼女もまた頭を下げる。

道の真ん中で、ぺこり、ぺこり。おかしなふたりだ。

ところで。

「30分だけの恋人って、何をすればいいんですか」

彼女は、目をパチパチと瞬かせた。

「……考えてませんでした」



温かな湯気をたてているコーヒーをはさんで、僕たちは向かい合わせに座っている。

「ここじゃあなんだから」

そういって、彼女は僕を近くのマックまで引っ張ってきた。そして、勝手にコーヒーを頼んで、僕にくれた。ありがたいけど、僕はコーヒーが飲めない。とりあえず、手を温めるのに使う。

「まずは、呼び方を決めなきゃならないですね」

そこからですか。

ぽかんとしている僕をよそに、彼女はコーヒーをふぅふぅと吹いて、笑顔を見せる。人懐っこい目をした子だ。

「クン付けで呼ぶのが好きだなぁ、あたしは」

さっきはあんなにせっぱつまった顔をしていたのに。

不思議な気持ちで、僕は彼女を見た。どこかで逢ったことがあるだろうか。くるくると巻いている白いマフラーもそのままに、彼女は小首をかしげている。知らない子、だよな。初対面だ。不思議な子だなぁ。

どういうつもりなんだろう。でもとりあえず、ここまで来た以上、30分はつきあわないと。

とりあえず、自己紹介、しておかなきゃ。

「決めた。みーくん、って、呼びます」

え。

名前を言う、直前だった。彼女が突然、言い出した。

なんで? 偶然、僕の苗字は「宮本」だけど。知っているのか。それにしても、そんな呼び方は初めてだ。

君は、いったい?

「じゃあみーくん、そろそろ行こうか」

戸惑っている僕を尻目に、彼女は立ち上がる。そして、人差し指をたてて、そのまま僕に突き出す。

「30分は短いよ。急がなくちゃ」



店を出ると、彼女は僕の右手をきゅっと握ってきた。

「ごめんね、みーくん。コーヒー飲めないんだね」

「あ、いや、僕が言わなかったから……」

ちょっと緊張して、右手が汗ばんだ気がする。

完全に、彼女のペースだ。これからどうするのか、どこに行くのか、僕は何も知らされないまま、彼女のおしゃべりに返事をしている。周りから見たら、こんな僕らでも初々しいカップルに見えているのだろう。女の子にリードされている、オクテな男。そんなんじゃないのに。

犬より猫が好き。色は白がいちばん好き。コーヒーよりもココアが好き、特にこんな寒い日には。マシュマロを浮かせたらおいしいよね。季節は冬が好きだなぁ、寒いけど。彼女の話は止まらない。白い息を吐きながら、とりとめのない話をどんどん続けて、僕はただただ頷くばかり。でも、訊きたいことは僕にだってある。

「名前、なんていうんですか」

彼女の話が途切れた隙に問いかけた。

「みーくん、だめだよ」

「ハイ?」

「恋人なんだから、敬語はだめだよ」

いたずらっぽい目で僕を軽く睨むと、人差し指でバツを作って見せた。

そしてまた僕の右手をつなぐと、言った。

「すかーれっと・おはら」

「え?」

「名前。訊いたでしょ?」

すました顔をしている彼女を見て、僕は吹き出してしまった。

何を言ってるんだか。

「そんなわけないだろ。なんて呼べばいいんだよ」

「みーくんの好きに呼んでいいよ」

好きに、か。

僕も名前を名乗らないまま、勝手に「みーくん」なんて呼ばれていたんだっけ。

名前なんかどうだっていいか。たった30分のつきあいだ。

「それより、みーくん。急がなくちゃ。時間がないよ、たどり着けなくなっちゃう」

僕の手を引っ張って、走り始める彼女。

僕は、元気のいい犬の散歩をしているような気持ちで、小走りで後をついていく。

たった30分。そう思うと、なんだか手放すのが惜しいような気もする。彼女の話す、とりとめのないこと、一晩眠ったら忘れてしまうようなどうでもいい話に耳を傾けながら、僕は彼女を見ていた。笑うと覗く八重歯や、軽い癖のある前髪や、寒さで淡いピンク色に染まった耳朶や、そんなものを眺めていた。

「到着」

彼女が足を止めたのは、街のシンボルタワーの前だった。

見慣れたそれは、クリスマス前のイルミネーションに彩られ、キラキラと輝いていた。きれい、と呟いて見上げる彼女の目も、同じようにキラキラと輝いていて、僕は思わず握られた右手を強く握り返した。

「ここに、来たかったの?」

「うん、みーくんと一緒に、見たかった」

さっきまでずっと喋り続けていたのが嘘のように、彼女は黙っている。

心地よい、沈黙だ。

「寒くない? 中、入る? 上にのぼってみる?」

彼女はあるかなしかの微笑みで、首を横に振る。

「上につく前に、30分が終わっちゃう」

「別にぴったり30分じゃなくても……」

彼女は黙って首を振る。そしてまた、タワーを見上げる。

彼女の視線を追うと、いやでもタワーの時計が目に入る。

30分だけ恋人になってくださいと言われたときから、もう25分が経っていた。

あと、5分。

体が冷えてくる。吐く息が白い。つながれた右手だけが、僕のものじゃないように温かい。

そのとき、空から、贈り物。

ふわふわとした雪が落ちてきた。

ゆっくりと落ちてくるそれを見上げていると、自分が宙に浮かんでいくような、不思議な気分になる。

「幸せだなぁ……」

彼女の口から、雪よりも白い息とことばが漏れてくる。

僕は訊き返したかったけれど、やめた。僕も、不思議な幸せを感じていた。

今まで経験したことがないし、もうこれからも経験することがないかもしれない、不思議な、だけど確かに、これもひとつの幸せなんだろう。

何も知らない、何が目的なのかもわからない、この女の子に振り回されて。でも今右側にいるこの女の子のことを、本当の恋人のようにさえ思っていた。それほどに、右側のぬくもりを愛しく感じている。「みーくん」という呼び方さえ、耳慣れたものに感じているくらいに。

一緒にいるのは、たったの30分だというのに。

「ねえ、みーくん」

「ん?」

「目、つぶって」

もしかして?

だけど、こんなところで?

期待と照れくささとでどきどきしながら、僕は言われたとおり目を閉じた。

そんな僕の耳に届く「絶対、目開けちゃだめだよ」という彼女の声、それから微かなシュッという音と、広がっていく甘い香り。

「何?」

「魔法をかけたの。きっとみーくんは、今日のことをすぐに忘れる。忘れていいの。だけど、この香りをどこかで感じたら、今日のことを思い出す。そのときはいつも、笑っていて?」

30分間、ずっと右側にあった甘い香り。

今は僕の周りを取り巻いている。ふわふわと。彼女の白いマフラーのように。

「目、開けてもいい?」

返事はない。

目を開けると、彼女はもういなかった。タワーの時計を見上げると、30分が過ぎていた。

雪も止んで、甘い香りも、いつの間にか消えていた。



夢だったのかもしれない。

あの日、確かに僕の右手は、温かかったような、気がするけれど。



それから1年。

今、僕にはつきあって3ヶ月になる女の子がいる。

いつも遅刻しがちな彼女を、待ち合わせた店の前でぼんやり待っているうちに、ちらちらと雪が降ってきた。

僕は白い息を吐きながら、もうすぐ駆けてくるはずの小さな体を思い出していた。

「ごめんね、また遅刻しちゃった」

ほら、ね。

僕を見つけて、まっすぐに走ってくる笑顔。これが見たくて、僕はいつも彼女を待っているんだ。

「今日はどうしようか」

「う~ん。どうしよう。しんちゃんはどうしたい?」

「じゃあ、イルミネーションでも見に行こうか」

僕は、彼女の右手をとって、歩き出す。

もうすぐクリスマス、街はキラキラとした灯りに彩られていた。道を行くどのカップルも、幸せそうに笑っていた。僕たちもきっと、そう見えているのだろう。彼女がうれしそうに「一緒にイルミネーションを見るのが夢だったの」なんてかわいいことを言うから、ついつい僕も笑顔になる。

風が少し強くなってきたから、僕たちは歩くスピードを少し速めた。僕たちはとりとめのない話をして、笑い合った。白い息が弾む。つないだ手が温かい。

15分くらいで、街のシンボルタワーの前に着いた。展望台から見下したら、灯りのともった街並みがきっと綺麗だろう。

カップルだらけのざわめきのなか、イルミネーションで縁取られたタワーを見上げる。

キラキラした光、ふわふわした雪、大好きな女の子。

心がしんとする。

僕たちだけ、雑踏から切り離されて、空に浮かんでいく気分だ。

「幸せだなぁ」

ふと呟いたときに、僕の周りをやわらかく、甘い香りが取り巻いた。

耳の奥に、声が届く。「みーくん」。

僕ははっとして、周りを見回す。

なんで今まで思い出さなかったのだろう。今日はあの日と、こんなにも、似ている。

あの不思議な女の子が僕の右側にいないだけだ。

笑うと覗く八重歯や、軽い癖のある前髪や、寒さで淡いピンク色に染まった耳朶や、タワーを見上げてキラキラと輝いていた瞳や、いろいろな彼女が記憶の箱の中から溢れ出してくる。彼女がかけた魔法。僕にかかっている、とけない魔法。甘い香りで開く、記憶の扉。

どこにいる? どこかで僕を見ている? あのとき、急に目の前に現れた、せっぱつまった表情。真っ直ぐに僕だけを写していた、あの日の彼女。

急にキョロキョロし始めた僕のことを、彼女が不思議そうに見上げた。

「しんちゃん、どうかした?」

いない。いるわけない。いや、もしいたとしても。

僕は彼女の右手を、しっかりと握る。

「何でもないよ。中、入ろうか。寒いし」

笑顔の彼女の手を引いて、中に入る。

僕はこうやって幸せにしている。笑っているよ。君はどうだい?

街のどこかからまた不意に飛び出してきそうな気もするし、もう二度と会えないような気もする。

また少ししたら、あの日のことはまた記憶の箱の中に閉じ込められて、思い出せなくなる。だけど、あの香りをどこかで感じたら、きっとまた懐かしく思い出すんだ。忘れたりしない、どこにいても、誰といても。思い出しては、不思議な出来事に微笑んでしまう。いつだって幸せでいなくちゃ、と思う。それこそが、君がかけてくれた魔法だと思うから。名前も知らない君がくれたプレゼント。この魔法は、いつまでも、とけない。



あの日、上ることができなかった展望台に、僕たちは行った。

眼下にはきらめくイルミネーション。キラキラとしている中に、ひなびた土産物屋があった。

タワーの置物や、絵葉書なんかが置いてある、ありがちな土産物屋。どういうわけか、古い映画のポスターも並べて貼ってあった。

すみっこが折れてて、いつから貼っているのかもわからないけど、そのなかの「風とともに去りぬ」のビビアン・リーが、暖房の風に揺れて、僕を見て、微笑んでいた。






おしまい



女の子バージョンはこちら

2006年9月16日 (土)

眠るプリン

今日は「電車男」見て、少し泣いてしまいました。ぺぺです。

エルメスさんみたいな女性に憧れます。絶対ムリな感じだけど。

でも、あの話の奇跡は、ぺぺにもおきてほしいです。

ところで、「青の時代(笑)」にかかれたものが発掘された話を以前しましたが、今日整理してみたら、今やってることと変わらない内容の話があったので、すっごいおかしかったです。

何年前に書いたんだろう? 20歳くらいのときかな?

全然覚えてないけど、面白すぎたので、皆さまにもおすそ分けします。

タイトルは、今日のタイトルのとおりです。

。。。。。

「眠るプリン」

ミントティに、ミルクをたっぷり。

温かなこのお茶で、疲れ果てた夜が少しずつ癒されていく。くたくたのパジャマが、素肌に気持ちいい。あたしはベッドの上で、ころんと横になる。

今日も空振り…。

30分前の駅の雑踏を思い出す。溢れ返る人、人、人。どうして、こんなにもたくさん、人はいるんだろう。

だけど、そんなにもたくさんの人の中で、あたしの見つけたい顔はなかった。

あと電車1本待とう。もう、あと1本だけ。そう思い続けて1時間半、改札口で待っていた。馬鹿げているけど、本当言えば、これは、今日に始まったことじゃあない。前の日も、その前の日も、同じことをした。

でも、今日、あの顔をもし見つけたら、あたしはどうしただろう。待っていた甲斐があった、と、とびきりの笑顔で駆け寄るにしても、今日着ている服は今イチだった。せっかくなら、全部完璧なあたしを見せたい。そんなふうに思えば、残念だけど今日は仕方ない。昨日は、髪がはねていた。その前の日は、靴が汚れていた。毎日こんなふうだから、駄目なのかな。

最近のあたしは、いつもふらふらと揺れている気がする。お皿の上のカスタードプディングのようなものだ。本当は逢いたいのか、逢いたくないのか。ただ、あたしはここまでやっているんだと、自己満足のためにこうして待っているのか。

でも、それだけにしては、がんばっていると思いたい。思えば、今までひとつのことに、こんなにも一生懸命になったことがあるだろうか。

できる限りのことはしたいと思う。後悔なんかしたくないから。逢いたい、それだけじゃなくて、逢うまでのプロセスも大事にしたいんだ。お伽話のお姫様のように、おうちで待ってるだけなんかじゃ、嫌。もし、幸せになれるとしたら、自分の手で掴み取りたい。そのために、自分でできるだけの努力はしていたい。だから、きっと明日も、明後日も、その次の日も、いつか逢える日まで、ずっと改札口で待っている。とびっきりのあたしで、とびっきりの笑顔で逢えるように、待っている。

とりあえず、今日はもう、休もう。棒になっていた足を、思いっきり伸ばす。重い瞼を閉じると、とろとろとやわらかい眠りの波が、やってきた。

。。。。。

短いですが、以上です。

予言してるみたいで、なんか怖ぇ~よ…。

RSRのとき、来るか来ないかわからない王子様をきょろきょろしながら探してた、ばかぺぺを思い出します。

あのとき、何を思ってたんでしょうね、自分でもわからないや。

でも、毎日改札口で待つことは難しいです…遠いから。

近かったら、きっとやってそうな自分が怖すぎます(^^;)